2025.12.5
誰もが安心して暮らせる介護保険制度を求める緊急声明
現在、社会保障審議会・介護保険部会で検討されている次期改定案は、利用者の権利を奪い、介護現場を崩壊させ、ひいては経済の衰退を招く「社会保障費抑制ありき」の内容となっています。「40歳から保険料を払ってきたのに、いざ必要な時に使いにくい」という仕組みは、保険制度としての信頼を損なう詐欺的な行為です。 利用抑制は一時的には費用の削減に見えますが、早期の対応を遅らせることは結果的に大きな社会的コストを生み出します。介護保険証の不交付案にも、利用抑制しようという意図が透けて見えます。
私たち「ケア社会をつくる会」は、現場の実態を無視した改悪に断固反対し、真に持続可能な制度への転換を強く求めます。
- 利用者負担2割への引き上げ反対
物価高騰で、特に年金を主な収入とする要介護者たちの暮らしが厳しさを増すなか、原則1割負担から2割への引き上げは利用者に倍増となります。高齢者の家計にとって大打撃であるばかりでなく、サービス利用を減らす結果を招くことで、事業者にも打撃を与えます。利用抑制と事業所減少によるサービス不足を家族が補うために「介護離職」が増え、労働力不足に拍車をかけるでしょう。利用者、事業者双方が共倒れになりかねません。天下の愚策というべきです。
- ケアプラン有料化に反対します
ケアマネジメントに利用者負担を求めることは、相談業務の原則に反します。そればかりかケアプラン作成の有料化は、制度利用へのハードルを高め、利用を抑制する結果になります。ケアマネジャーの労働条件が悪すぎるために志願者が減少し、ケアマネジャー不足で利用の開始ができないケースさえあります。また高齢単身世帯の増加に伴い、業務外のアンペイド・ワークも増えています。不合理な更新制は廃止の方向が見えてきましたが、基本報酬の引き上げが必要です。
- 要介護1・2の総合事業への移行(保険給付外し)反対
要介護1・2は決して「軽度」ではありません。専門的な訪問介護やデイサービスから切り離し、総合事業へ移行させれば、適切な早期のケアが受けられず、重度化や認知症の進行を早める結果となります。 2017年から要支援1・2が総合事業へ移行されましたが、全国で約9割の自治体は、従前どおり予防給付によるサービスを行っている現状があります。まずは総合事業がどのような効果を上げたのかを検証することが前提です。
- 訪問介護報酬の減額撤回と基本報酬の増額を求めます
2024年の第9期改定で訪問介護報酬が減額されたことで、訪問介護の現場は大打撃を受けました。介護保険開始以来最大の倒産件数を示しただけでなく、訪問介護事業所ゼロ自治体が増えたことは周知のとおりです。私たちは次期改定期を待たず、減額の撤回を求めてきました。そもそも介護保険開始以来、すべての介護報酬は物価上昇率にも、最低賃金の上昇率にも追いついていません。抜本的な基本報酬増加を求めます。
- 介護介護保険証の送付継続を求めます
中山間・人口減少地域、大都市部、一般市の三類型に区切り、介護サービスの提供が地域の実情に即した形で行うことを目指す検討が始まっています。しかし、介護サービスが減少した地域の緊急性を理由に、制度の根幹にかかわる見直しを行うことには慎重であるべきです。場当たり的な基準緩和は労働条件の悪化をもたらし、事業の撤退を生みかねません。また、なし崩し的に一般市や大都市部にも適用されていく導入口になることを強く危惧するものです。人口減少地域の対応を拙速な介護保険の改変で行うことに反対します。
介護へ投資しケア社会を創ることが、未来への希望です
国は改定毎に利用者の「負担の増加」と「給付の抑制」をめざしてきましたが、その結果、必要なケアを遠ざけ、要介護者の重度化を招いています。 介護保険の持続可能性のためには、介護保険財源のうち公費負担の増額が不可欠です。
介護保険は高齢者のためだけのものではありません。少子化と人口減の進む未来に向けて、子育て世代や単身者などを含むすべての人のケアのニーズが満たされるよう、強く求めます。
2025年12月5日
緊急集会・ストップ!介護崩壊 参加者一同


